船橋西図書館焚書事件(平成14年)その1


産経新聞(全国版) 平成14年4月12日

市立図書館が廃棄 西部、渡辺両氏の著書68冊

教科書議論高まった昨年8月

船橋市教委調査へ

 

 

千葉県船橋市の船橋市西図書館(木村洋一館長)が、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆に加わった扶桑社の教科書採択をめぐる議論が高まっていた昨年八月ごろ、教科書の執筆者で評論家の西部邁(すすむ)氏らの著書を大量に廃棄処分にしていたことが十一日、分かった。廃棄処分について木村館長は「政治的、思想的意図はなかった」と説明しているが、船橋市教委は図書館の対応について「故意とみられても仕方がない」として、調査に乗り出す方針だ。

 

 同図書館は西部氏の著書を四十四冊所蔵していたが、昨夏、四十三冊を廃棄し、現在は「六十三年安保センチメンタルジャーニー」の一冊だけしかない。また上智大名誉教授、渡辺昇一氏の著書も五十八冊あったが「そろそろ憲法を変えてみようか」「国益の立場から」など半数近い二十五冊を廃棄した。

 木村館長によると、図書館では例年九月に本を虫干しする「曝書」を行い、その前に蔵書整理として破損本や古くなった本、貸出回数の少ない本を処分している。

 ここ数年、社会科学分野の蔵書が増えたため、昨夏はその関係の本に絞って整理することになり、担当者の判断で約五百冊を廃棄処分にした。この段階で西部、渡辺両氏の著書の多くが「貸し出し率が低い」などの理由で廃棄処分の対象になったという。

 しかし、貸し出し頻度のデータについては「年度が替わったので簡単には取り出せない」としている。

 廃棄処分が行われた昨夏は、扶桑社の教科書採択をめぐる議論が高まっていた時期。特定の著者の蔵書を大量に廃棄処分したことについて、木村館長は「結果として誤解を与えかねないが、担当者に事情を聴いた結果、政治的、思想的な理由はなかったし、あってはならないことだと考えている。」と話している。

 だが、船橋市教委では、図書館の対応に問題がなかったか、関係者から事情を聴くなど、調査を行うことにしている。

 

「予測していた」

西部邁さんの話

「図書館の大半には強かれ弱かれ左翼人士がいる。教科書問題のように激しい論争が起きると私の本を廃棄するというのは左翼的行動で驚くにはあたらない。この国の言論は暗黒時代に入っており、このことは予測していた。イデオロギー闘争からいわゆる焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)が起こるのは歴史の常だ。これからもさまざまな所で同様のことがいいように進むだろうが、本を焼いたなら、せめて理由ぐらいは明確に示してほしい」

 


産経新聞(全国版) 平成14年4月12日

市立図書館が廃棄 西部、渡辺両氏の著書68冊

教科書議論高まった昨年8月

船橋市教委調査へ

 

 

千葉県船橋市の船橋市西図書館(木村洋一館長)が、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆に加わった扶桑社の教科書採択をめぐる議論が高まっていた昨年八月ごろ、教科書の執筆者で評論家の西部邁(すすむ)氏らの著書を大量に廃棄処分にしていたことが十一日、分かった。廃棄処分について木村館長は「政治的、思想的意図はなかった」と説明しているが、船橋市教委は図書館の対応について「故意とみられても仕方がない」として、調査に乗り出す方針だ。

 

 同図書館は西部氏の著書を四十四冊所蔵していたが、昨夏、四十三冊を廃棄し、現在は「六十三年安保センチメンタルジャーニー」の一冊だけしかない。また上智大名誉教授、渡辺昇一氏の著書も五十八冊あったが「そろそろ憲法を変えてみようか」「国益の立場から」など半数近い二十五冊を廃棄した。

 木村館長によると、図書館では例年九月に本を虫干しする「曝書」を行い、その前に蔵書整理として破損本や古くなった本、貸出回数の少ない本を処分している。

 ここ数年、社会科学分野の蔵書が増えたため、昨夏はその関係の本に絞って整理することになり、担当者の判断で約五百冊を廃棄処分にした。この段階で西部、渡辺両氏の著書の多くが「貸し出し率が低い」などの理由で廃棄処分の対象になったという。

 しかし、貸し出し頻度のデータについては「年度が替わったので簡単には取り出せない」としている。

 廃棄処分が行われた昨夏は、扶桑社の教科書採択をめぐる議論が高まっていた時期。特定の著者の蔵書を大量に廃棄処分したことについて、木村館長は「結果として誤解を与えかねないが、担当者に事情を聴いた結果、政治的、思想的な理由はなかったし、あってはならないことだと考えている。」と話している。

 だが、船橋市教委では、図書館の対応に問題がなかったか、関係者から事情を聴くなど、調査を行うことにしている。

 

「予測していた」

西部邁さんの話

「図書館の大半には強かれ弱かれ左翼人士がいる。教科書問題のように激しい論争が起きると私の本を廃棄するというのは左翼的行動で驚くにはあたらない。この国の言論は暗黒時代に入っており、このことは予測していた。イデオロギー闘争からいわゆる焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)が起こるのは歴史の常だ。これからもさまざまな所で同様のことがいいように進むだろうが、本を焼いたなら、せめて理由ぐらいは明確に示してほしい」

 


産経新聞(全国版) 平成14年4月13日

別の著書も廃棄 船橋西図書館

西尾氏、福田氏の20冊 

 

 千葉県船橋市の船橋市西図書館(木村洋一館長)で、評論家の西部邁氏や上智大名誉教授、渡辺昇一氏の著作が大量に廃棄された問題で十二日、「新しい歴史教科書をつくる会」名誉会長、西尾幹二氏や福田和也氏の著作も大量に廃棄されていたことが新たにわかった。船橋市教委の石井英一・生涯学習部長は「廃棄の基準に照らして問題はなかったと考えているが、特定の著者の著作に集中した経緯については調べる」と詳しく調査する方針を示した。

 同市教委の調査では、西図書館は昨年八月、五百四十一冊を廃棄処分にした。このうち、雑誌のバックナンバーが三百五十四冊を占め、書籍は百八十七冊。このなかに西部氏の四十四冊、渡部氏の二十五冊、西尾氏の九冊、福田氏の十一冊が含まれていた。

 市教委の図書廃棄基準は①汚れ、破損が著しい②利用頻度が低い③内容が古い など。廃棄処分を担当した司書への事情聴取では、「本が汚れていた」「利用頻度が低かった」などと説明し、政治的、思想的な意図は否定したという。

 このため、石井部長は「廃棄基準に沿って行われており、廃棄処分は問題ない。だが、一度に特定の著者の著書を大量廃棄するのはサービス上問題がある。段階的に処分するべきだった」との見解を示す一方、「特定の著者に偏った理由は調べる必要がある」と述べた。

 

 

 

 


産経新聞(千葉版) 平成14年4月13日

あいまい説明に終始

市教委「政治的意図なし」

 

船橋市西図書館(木村洋一館長、船橋市西船)が評論家、西部邁氏らの著書を大量に廃棄した問題で、船橋市教委は十二日、石井英一・生涯学習部長、木村館長らが記者会見した。「廃棄には問題ない」と強調する一方、特定の著者の著作に集中したことについて「政治的意図はないが、調査を続けなければならない」と述べるなど、あいまいな説明に終始。廃棄経緯をつかめていない実態を浮き彫りにした。

 

船橋市西図書館 西部氏らの著書廃棄

 

 市教委の説明では、昨年八月、一般書籍百八十七冊、雑誌三百五十四冊を廃棄した。廃棄する図書の選別には八人の職員が関与し、このうち、西部氏らの著作が並ぶ社会科学分野は女性司書が受け持った。

 女性司書は同日の市教委の事情聴取に対し「本の汚れがひどかった」「利用頻度が低かった」などと、選別理由を説明したというが、西部氏や渡辺昇一氏ら特定の著作に集中したことについては「全部自分でやったのか、記憶がない」などと話しているという。

 廃棄処分が決まった図書は木村館長がチェックすることになっていたが「著者の偏りには十分なチェックをしなかった」と、チェック体制の不備は認めた。

 また、廃棄された西部氏らの著書の中には「国民の道徳」など比較的新しく、貸し出し件数が多いものが含まれているが、「社会科学本のおいてある場所は、湿気がひどく、結露で本の傷みが早い。ゴキブリもいる」(安藤和夫館長補佐)などと弁明した。

 石井部長は「廃棄は政治的、思想的意図でなく、基準に沿って行われたと考えているが、特定の著者に偏っており、段階的に廃棄すべきだった。一度に特定の著者の本を廃棄した理由は調べなければならない」と述べ、調査の継続方針を示した。

 

写真(特定著書の図書廃棄について会見する石井英一・生涯学習部長(右)と木村洋一・西図書館長) =船橋市役所


産経新聞(全国版) 平成14年4月16日

 

船橋市西図書館大量廃棄 全リスト判明

保守系集中くっきり 購入僅か5カ月の本も

 

千葉県船橋市の船橋市西図書館で特定の著者の本型いりゅに廃棄された問題で、廃棄された本の全リストが十五日明らかになった。これまでに判明した評論家、西部邁氏らの著書のほか、藤岡信勝東大教授らのベストセラー「教科書が教えない歴史」や、漫画家の小林よしのり氏、経済評論家の長谷川慶太郎氏、日下公人氏ら保守系論者の著書に偏って廃棄されていた。わずか五カ月で捨てられた本もあるなど、税金で購入された公共物のずさんな扱いは批判を浴びそうだ。

 

 昨年八月に廃棄された書籍・雑誌五四一冊のうち、主な書籍は表の通り。渡辺昇一・谷沢永一著「男冥利」は六カ月、渡辺昇一氏・小林節著「そろそろ憲法を変えてみようか」が七カ月、西部邁著「国民の道徳」は九カ月 など、短期間で廃棄された本が目立っている。

 この問題で、船橋市の落合護教育長は十五日、約二十人の当時の館員全員からの事情聴取を指示した。関与した女性司書に対する十二日の聴取では「汚れ、破損がひどかった」と理由を説明する一方、「全部自分でやったか記憶がない」:などと話していることから、市教委は「司書一人の行動なのか、図書館ぐるみなのかをはっきりさせる」としている。

 落合教育長は「基準に沿った廃棄だったとしても、特定の著者の本をまとめて捨てるなら、上司にはリストを見せるだけではなく、本の実物を見せて廃棄理由を示すことが必要だった」と述べた。

 

「思想的に偏向」 つくる会抗議文

 

船橋市西図書館の蔵書大量廃棄問題で、新しい歴史教科書をつくる会は十五日、船橋市の藤代孝七市長、落合護教育長らに抗議文を提出した。「公共の図書館が、ある政治的、思想的な変更をもって書物を廃棄した」と指摘。経緯や廃棄を決定した職員の特定、責任者の処分などを求め、十九日までに回答するよう要求している。

 

■廃棄された本の主な編著者と書名■(五十音順)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


産経新聞(千葉版) 平成14年4月16日


疑いさらに拡大 船橋市西図書館特定著書廃棄 

不自然な対応に教育長疑問符